君想い【完】



「純!」

「さりちゃんちょっと来て。」

「ちょっと待ってよ。友達来てるの…。」

「いいから!」

「でも…」

「さりちゃん!」

あまり大声を出したり、怒ったりしない僕。
でも今の僕は、さりちゃんでも見たことないような表情をしているだろう。

「純ちゃん?」

「は?」

「あたし麗。麗しいって書いて麗。さりなに話は聞いてる。純ちゃんでしょ?」

「あんた誰?」

「さりなの友達。」

「嘘付け。昨日も僕に会ったの覚えてる?」

「もちろん。」


麗は僕なんかよりずっと落ち着いている。
表情が変わらない。

僕はこの目を知っている。

麗はさりちゃんと同じ目をしている。

現実なんか見ていない。心がここにない目。
どこか遠くを見ている、暗い凍り付いた目。