君想い【完】



レンガ作りの家の前で降り、
車庫を開け森下さんは車を止めた。

家は1階建てで、庭にはたくさんの花が咲いていた。

春を彩る花たちが、
優しい風に吹かれて僕たちに匂いを運ぶ。


「ララ!花壇には入らないで。」


庭から声が響いてくる。

黒い柵の門を開け、森下さんが体を庭に向けた。


「舞、ただいま。」

「あっちゃん!お帰り!」


笑顔を見せたのは紛れもない
舞ちゃんだった。


舞ちゃんは水を出したままホースを落とした。


ララと呼ばれていた正体であろうと思われる茶色いダックスフンドが水を被って吠えていた。


「ゆかちゃん?サリーちゃん?」

「舞ちゃん!」


2人は森下さんを邪魔かのように
手で押し、舞ちゃんの元へ走って行った。


2人に挟まれ、力強く抱きしめられる舞ちゃんは
相変わらずお人形のような子だった。


「あっちゃんの会わせたい人って、お兄ちゃんのお友達だったの?」


僕たちの姿を確認して、舞ちゃんは森下さんに問いただした。


「ずっとみんなで舞のこと探していてくれたんだって。」

「舞ちゃん。探したよ。」

「ごめんなさい。」

「元気そうで良かった。」

「そんな所じゃなんだから、家に入って下さい。」


水道の蛇口をひねりながら、森下さんは僕たちに手招きをする。