君想い【完】



僕は若くして店長を任されて必死だった。
舞と出会ったときは24歳。

まだ店長になって2年経たない頃だった。


「森下ー。この子雇ってくれない?」


急に店に来た社長の第一声。

その社長の横には疲れきった顔をした舞がいた。


「その子いくつですか?」

「4月で13歳になった。中学1年生だ。」

「無理です。雇えないですよ!」

「そうやって断られてもう12軒目なんだよ。裏の人に頼まれて動いてるんだけど、絶対雇うのは無理だよな。」


社長は頭を抱えて座り込んだ。

小さな人形を抱いた、
綺麗な顔だちのお姫様はとても13歳とは思えなかった。

艶のある長い黒髪を揺らしながら、
僕から目を逸らす。


「この子どうしたんですか?」

「借金を抱えた家の子。父親と母親とお兄さんはもう殺されたらしい。この子を残して借金を返済させようとしたみたいだよ。東龍の方々は。で、俺に預けてどっかで働かせろって言うんだ。無理だよな。あ、電話だ。もしもし?」


社長が出て行った扉の前に舞は立ったままだった。


「ジュース飲む?」

舞を座らせて、ジュースを差し出すと舞は優しく僕に笑い掛けてくれたんだ。

「名前は?」

そう聞いても舞は笑うだけで、
まさか親の兄弟が殺されたショックで声が出ないのかと思ったんだ。

「まさか喋れない?」

舞は笑って首を横に振った。


「榎本舞です。あたしが悪い子だったから、あんな事になったの。
ずっとあたしを守ってくれていたお兄ちゃんも、ママも。パパだってあたしの事殴ったりしてたけど、たった1人のパパだったの。
あたしが何も話さないでいい子にしてればもう誰にも迷惑は掛からない。
迷惑は掛けません。ここで働かせて。
パパが残したお金を家族のあたしが返さなきゃ。お願いします。働かせて下さい。」


真剣に僕に頭を下げる姿を見て、
思わず僕は泣いてしまったんだ。