君想い【完】


「純、トシ!こっち来て話そうよ。」


絵美が意地悪く大きな声で言ってくる。
さりちゃんへの当てつけだろう。


同じクラスにはなれたものの、
絵美やさりちゃんに反感を持つ人が多いクラスだった。


「行って来ていいよ。」


申し訳なさそうにさりちゃんは言うが、
僕とトシが言うことを聞く訳でもなくその場に居座った。


絵美の舌打ちがここまで聞こえてくる。


「桜散っちゃったね。」


校庭にある木を見ながらさりちゃんは遠い目をした。


祥吾の僕たちと同じ高校に通うはずだった。

きっとこの場に祥吾もいたんだろう。


4人でバカみたいに笑って、
さりちゃんにも友達はいっぱいいて
僕は学校のみんなにゆかの事を自慢していたのだろう。

でもそんな未来は跡形もなく崩れ落ちて、
今あるこの現状が現実なのだ。


「純は今日も予備校?」

「うん。ごめんね。今日もトシと香代と帰って。」


最近ゆかと香代は毎日うちの学校に顔を出す。

僕とゆかが同じ予備校に通っているからだ。


というより、ゆかが僕の通っている予備校に通い出した。


「少しでも純のそばにいたい。」


ゆかのストレートな言葉に苦しくなった。


もうゆかに戻る可能性がないことは
きっと理解しているだろう。

それでも出来る限りを信じて
ゆかは僕を想い続けている。


ゆかに戻る事があるとすれば、
祥吾が目を覚ましたとき。


可能性は5%もないだろう。


僕がゆかをどう想っているか、
そんな話はあと回しだ。


今はさりちゃんのそばにいる事だ一番大切で、
さりちゃんを想い続ける。

義務化してる、
と言っても過言ではない。

でも僕は愛情とか、同情とか関係なしに
さりちゃんが一番大切な事は変わりない。