ゆかと香代はさりちゃんの家に泊まると言って、
僕の部屋から荷物を運ぶために
玄関からさりちゃんの部屋に入って行った。
ゆかと香代の姿を見て、
おばさんが涙ぐんでいた。
僕の部屋で姉貴に話しをすると、
卒業式もおじいちゃんのお葬式も泣かなかった姉貴が
泣いていた。
「さりな可哀想。でも五神田の娘すごくいい奴だね。なんか企んでそうで怖いけど。」
僕とトシは深く頷いた。
初対面であった人が
苦しんでる子を助けるために
何でもしてあげるなんてそんな上手い話がある訳がない。
だからゆかは明日会わせろと言ったのだ。
「舞ちゃんね。あたしも一応調べてみるけど、だいたいの真実が分かって良かったね。」
久しぶりに姉貴の本当の笑顔を見た気がする。
最近はさりちゃんの話ばかりで
いつも眉間にしわが寄っているか、
真剣な顔をしているかだった。
今日みんなの荷物を取りに行く時も、
3人の親の前で作り笑いを必死に振りまいていた。
「早く寝な。明日日曜だからってゆっくりは出来ないんでしょ?」
「姉貴、今日はありがとう。」
「いいの。あんたを殴った龍司が殺したいほど憎いけどね。」
「お姉さんなんだかんだ超ブラコンっすよね!」
「うっさいトシ!早く寝ろ!」
照れる姉貴を見て
僕も久しぶりにお腹から笑った。
隣りからも笑い声が聞こえてくる。
懐かしいさりちゃんの笑い声。
でもまだどこか寂しそうだ。きっと顔は笑っていないのだろう。
上手く笑えないのだろう。
笑い方も、上手な泣き方も忘れてしまっているのだから。
だから引きつった笑いしかできなくて、
上手く泣けないから気持ちがコントロール出来なくて発狂する。
それは今一緒に笑っているゆかと香代も気が付いているだろう。


