君想い【完】



「行こうか。」

僕が先頭を行き、ゆかは僕の制服の端に掴まって階段を上った。

香代はトシの手をきつく握り、トシに引かれるように階段を上って来る。

姉貴が一番最後を歩き辺りを見回していた。


広々とした店の奥にはカウンターがあり、
いくつか酒が並んでいた。

制服の僕たち4人を
なめ回すようにみんなが見ていた。


「よう!珍しいじゃん。お前が顔出すなんて。」

「顔出しに来たんじゃないよ。龍司どこにいるの?」


姉貴に話しかけて来た男は奥を指した。

指した方向にはトイレの看板があった。


「トイレにいるの?」


ゆかが不審そうに言葉を漏らすと、
姉貴は首を横に振った。


姉貴の後を追い、トイレの方向に進んだ。


トイレのドアを開けると、
男用と女用のドアが二つある。


そのドアともう一つ、
何も書かれていないドアがあった。


「ゆかりちゃん、香代ちゃん。鼻と口をハンカチで押さえて。」


2人は鞄からタオルハンカチを取り出し、
姉貴に言われた通り鼻と口を押さえた。


「純とトシはセーター伸ばして押さえな。」


言われるがまま袖を伸ばして口を押さえた。

伸びが足りなくて鼻まで押さえることは出来なかったが
鼻で息をしないように努力した。