君想い【完】



次の朝、僕の日課は崩れてしまった。
玄関を開けるといつも立っているさりちゃんの姿がない。

中澤と書いてある表札の横のインターホンを少し乱暴に押した。

「あら?純ちゃん。どうしたの?」

いつも優しい笑顔を振りまいてくれるおばちゃん。
僕にとってもお母さんみたいなもので、さりちゃんと一緒に育ててもらったようなもんだ。

少し心配そうな顔をして出てきた。

「さりちゃんは?」

「もう家でたけど、なんかあったの?」

「いや…。わかった。」

「純ちゃん!最近さりな遅くに帰ってきたり、やたら煙草くさかったりするの。なんか知ってるなら…」

「僕がいるからさりちゃんは大丈夫だよ!」

「でもあんな事があったからなんか心配で。さりなは感情もださなくなったし、少し怖くて。」

「大丈夫!大丈夫だから!じゃあいってきます!」


大丈夫と何回も言ったのは、まるで自分に言い聞かせるかのようだった。

そのまま足を止めずに学校まで走った。