祥吾のお父さんは薬を売るだけではなく、
自分も薬をやっていて、
妹の舞ちゃんに手を挙げることが度々あったらしい。
祥吾は舞ちゃんを守るために
なるべくそばにいて、
離れないようにしていたそうだ。
僕が夏休みに祥吾の家で見た大量の紙の山はきっと返済の事が書かれている紙だ。
祥吾がさりちゃんに対して焦っていたのは、
いつかこうなる事を予想していたのかもしれない。
「祥吾はどうなるんですか?お金が無いなら、入院させるお金も無いですよね?脳死なら人工呼吸器で命は繋げるけど、脳死はもう死んだって判断されるわけだし…」
「奥さんの方がね、そんな大金じゃないけど旦那さんに黙って祥吾くんと舞ちゃんのためにお金を残していてね。口座をうちの口座にしてお金を貯めていたのよ。」
おばさんが立ち上がり、テレビボードに付いている棚を開け、ティッシュ箱サイズの小さな金庫を取り出した。
ダイヤルを回し、箱を開けると印鑑と通帳、キャッシュカードが出てきた。
「奥さんと一緒に毎月銀行に行って、2人で入金していたの。8年前から。」
通帳を開き、僕に手渡してきた。
最後の入金は昨日。
もう危機を感じていたに違いない。
通帳にあるお金は150万。
8年掛けて、150万だ。
毎月15000円程度しか入金はされていない。


