「彼のご両親について何か知っているかい?」
涙を手で拭い、首を横に振る。
「祥吾はどうやってここに運ばれて来たんですか?」
「救急車だ。ひどい怪我でとくにひどく頭部をやられていてね。脳動脈瘤が破裂していた。脳死というのは息もする。背だって伸びたりするし、男の人なんか髭が伸びたりもするんだ。死とは言いづらいが、彼に脳死判定が出てしまった。」
僕は黙って話を聞くしかなかった。
辛くても、聞きたくなくても
この話はきちんと聞かなきゃいけない話だ。
「生かすか、生かさないかはご家族しだいなんだ。人工呼吸器で繋いだままの我が子を見るか、臓器移植に協力するか。もうご家族しだいなんだ。彼の両親はどこにいるんだ?」
「祥吾が運ばれたときいなかったんですか?」
「彼の付き添いは近所の人で、手続きもすべてその人がやってくれたんだ。」
「その人は今どこにいるんですか?」
「警察だ。」
話がまだつかめない。
祥吾は争いごとを起こした。
外傷を見れば誰もが分かる。
でも争いはなんだったのか、
行方の分からない祥吾の家族。
このまま祥吾はどうなるのか、
まったく分からないままだった。


