「ちょっと君いいかな?」
医者が病室の外に呼んだのは僕だけだった。
集中治療室から少し離れた椅子に腰を掛け、僕にも座るように催促してくる。
「大丈夫かい?」
「僕より他の4人の方が心配です。」
特にさりちゃんが。
目がうつろで、言葉がすべて浮ついている。
足が地に着いていないみたいな歩き方だ。
「だろうね。君が一番落ち着いて見えたから呼んだんだ。」
「何ですか?」
「さっきもう無理です。って言ったの聞こえたかい?」
僕は深く頷いた。
あの時ちゃんとその言葉を聞いていたのは
僕だけかもしれない。
「脳死判定って分かるかな?」
また深く頷いた。
自分でも目が潤んできたのが分かった。
さっきまで冷静だった僕も
手の震えが止まらない。
脳死判定、
もう祥吾は生きていないじゃないか。
たくさんの管に繋がれて、
息もしていたし、
少しだけ触れた体は温かい。
でも、
もう祥吾は死んでいる。
死んだと判定されたんだ。


