ーーー藤さんがおれに、キスをしてくれた夢を見た。
なんて贅沢。



「……実際はそんなこと、ないのにな」


起きたばかりのせいか、頭がまだ、ぼうっとしている。
そのせいか、いつもは口にしないことをしてしまう。


「好き。大好きです」


声が少しだけ甘ったるくなるのは許してほしい。
そして口にして思った、これいつも言ってることだ、と。

……相手はどう思っているのか?
今更、気にしても遅いけれど、やっぱり気になってしまう。



ーーー藤さん、おれのことどう思っていますか。


……聞くことができたら、どんなに楽か。

相手にどう思われててもいいから、想いを貫く、なんて。
どんなに苦しいことだろう。
成就するか、分からない。


って、何逃げてんだか。
答えをもらってないから、前に進まなくていい。
完全にフラれたくないから言い出せない。
そんなんじゃいけないってわかってんのにな。

怖いんだよ、くそ。