ずっと思っていたが、口には出せていなかった。
 それは、これを口に出せば、私が矛盾を認めてしまうから。
 矛盾を認めれば……その産物である幻覚は姿を消してしまうだろう……そんな確信に近い思いがあったからだ。

 ……しかし、私は決意を固めたのだ。この幻覚の隼人くんと……お別れする覚悟を。

 そんな決意を示すように、決定的ともいえる証拠をぶつける。
 これで……隼人くんとも……お別れだ。
 もはや、このメールという証拠を出してしまえば……幻覚は出ていられないだろう。

(メール……メールか)

 思った通りだ……。
 メールという動かぬ証拠を私に付きつけられ、今まで怒って顔を赤くしていた隼人くんが急に冷静な表情になった。
 振り上げていた拳を下げ、顔を俯かせてしまう。
 その表情が……私からは見えなくなる。

 身体も微妙に震えているように見える。
 プルプルと……まるでその身を雨に打たれる子犬のような……そんな姿に私には見えた。
 その姿が、私に確信を与える。それは……望んではいなかった確信だ。

 やっぱり……この隼人くんは幻覚だったのか。
 私が心の平静を保つために、自分の都合の良いことを言わすために生み出した――幻。
 
 これで……私は一人で元に戻る方法を探さなければいけなくなるのかな。