駅の改札を抜けて、そのまま真っ直ぐに通路を進む。

 改札をずっと先に進むと、この市内で一番大きな百貨店がある。
 住宅街ではあるが、駅前だけはそれなりに発展しているのだ。
 特に目的がない限りは、ほとんどの用事は駅前に出るだけで解決する。
 もの凄く都会、ということもないが、不便を感じるほどの田舎ではないような土地だ。

 その百貨店と改札のちょうど中間点にエスカレーターがあり、それを下ればバスターミナルの場所に繋がる歩道に出る。
 その歩道を二分も歩けば、私が住む家の方面へ向かうバス停留所に到着する。

 ここはいつも通り慣れた通学路の一部だし。
 現在の私は隼人くんになってしまっているわけで。
 知り合いに出会ってしまうかもしれない、という懸念がない。
 それだけに隼人くんの地元を歩いているときよりは緊張感が少ない。

 朝からずっといらぬ緊張感に縛られていたわけで。
 この解放感が何とも言えずありがたい。
 少しズレているような気もするが、『やっぱり地元は良いよねー』という感じである。

 歩き慣れた道を進み、もう少しでバスターミナルに着く――と、いった所で。
 望んでいたような、望んでいなかったようなモノが来た。

 片手に握った携帯から伝わってくる振動……メールが来た!