チェンジ type R

(あのさ、俺さ、子供の頃から中道さんのファンで――)

 こちらからの返答を待つこともなく、隼人くんは先ほどから興奮したままでどれほど隼人くんが私のお父さんのファンであるかを語る。
 これがファン心理というものなのだろうか?
 好きなものを語れる相手に出会うと……自然に口が動き出すという。

(ウチに中道さんの本も全部揃ってるし、ずっと憧れてるんだよ!)

 お父さんのファンであることは嬉しいし、娘としては本当にありがたい存在だと思う。
 だが……この状態では……。

(まさか同じ市内に住んでるなんてな! 本当にスゴイよな!)

 こちらが黙っていても、隼人くんは次から次へとお父さんの話題を出してくる。
 というより、私のことは関係なく一人でどんどん盛り上がっているように思える。
 隼人くん……自分が現在置かれている状況を完全に忘れてないかい?

 出来ればこんな状況でない時にそういう話はして欲しいわけで――。
 お父さんの話ばかりしていたら、本筋である『元に戻る方法』を探れないじゃないか!