奥手女子の恋愛事情

「それって、普通のことじゃない?」

部活終わりの帰り道

隣を歩いていた結衣が言った。


「好きな人を目で追っちゃうって

ことでしょ、単純に。

私だって佐々木先輩のこと

いつも見てたもん♪」

佐々木先輩のことを思い出したのか、

結衣はご機嫌だ。


「そうなんだけど・・

加賀見からしたら不審者だよね、私。」


自分でも不審だと思ってるんだけど、

加賀見から目が離せない。

そして見れば見るほど、好き・・に

なっていくみたいだった。


「まぁ、加賀見だって

朱美にある意味不審なことしたんだし、

別にいいんじゃない?」


ほほほ、と結衣が嬉しそうだ。


「不審なこと・・・ね」


無かったことにしたはずなのに

またあの時のことを思い出してしまって

胸がドキドキする。


「そんなに気になるなら、

加賀美に聞いてみたら?

なんでキスしたのかって。」


ニヤニヤしながら結衣が言った。


「え!? む、無理だよ・・」


思い出しただけで思考停止になるのに、

聞くなんてできそうにない。


「まぁまぁそう言わずに、

絶対に聞いてみた方がいいって!

そうしたらスッキリするじゃん。」


にやけ顏のまま結衣が言った。


スッキリ、するかな?

スッキリ、という言葉には弱い。

最近加賀見のことをごちゃごちゃ考えすぎて、

ちょっと疲れてきてしまっていた。