奥手女子の恋愛事情

「朱美、もうそろそろ次の練習始まるよ。」

日高 結衣(ひだか ゆい)が

飲み物を片手にやって来る。


結衣は、小学校から今の中学校まで

ずっと一緒に過ごしてきた。

そして今は部活まで一緒という、

私の一番仲のいい友達だ。



「もうそんな時間?

休憩時間ってあっという間だね。」


私はよっこらしょと立ち上がって、

バスケットコートに向かう。


「よーし。じゃあ次は5対5!

男子から先に始めるぞ!」


バスケ部の顧問、森先生が号令をかける。


「もっとしっかりディフェンスつけ!」


背が高い髭を生やした森先生は

部員からマリオと呼ばれている。

厳しいけど優秀な顧問らしい。


その証拠に我が中学校の男子バスケ部は

いつも県大会上位校。

部員だって100人近くいる。


一方、私がいる女子バスケ部は3チームを

組むのもギリギリの部員15名。。

もちろんチームも弱小で、

県大会まで行ったこともない。



「次は女子!青井、適当にチーム組んどけ」

マリオも女子バスケ部の扱いは適当~。


わが中学校には体育館は一つしかなく、

こんなに弱い女子バスケ部も

いつも強豪の男子バスケ部と一緒に練習。



きっとその方が体育館使うのに

効率が良いんだろう。



「じゃあ私と結衣は分かれて、

後はポジションごとに散らばる感じに

しよっか。」


私、青井 朱美は一応この女子バスケ部の

キャプテンだ。


「ラジャー。じゃあ友ちゃんと神木、菊池と

佐田はうちのチームね。」


副キャプテンの結衣がテキパキとチームを分ける。


私は名ばかりキャプテンで、

実際結衣がいないと何もできないと

言ってもいい。


どちらかというと人見知りで口下手な私は

明るく仕切り上手な結衣に頼りっぱなしだ。


なんで私がキャプテンになったのかは謎。

マリオが指名して決めたから、

よく分からない。