奥手女子の恋愛事情

でも、それからも細かい嫌がらせは続いた。

この日も練習中に、先輩から


「ちょっとゼッケン足りないから

青井取ってきて!」


と言われ、部室に向かっていた。



一年生に頼めばいいのに・・毎回私だ。


別に雑用自体はいいんだけど、

その悪意に気分がへこむ。


思わずため息が出た。


「青井、練習中にサボり?珍しいな」


前方から、よく響く低い声がした。


その声に顔を上げると、

まだジャージに着替えもしてない加賀見が

目の前にいた。


ドキ。

加賀見がこっちを見てるだけで、

心拍数が上がる。



加賀美 晃(あきら)。

同じクラスで同じバスケ部。

バスケ部らしい長身で、

少し浅黒のエキゾチックな顔をしている。



「ぜ、ゼッケン取りに部室に来ただけだよ。

か、加賀美こそ今日は部活休み?」


普通に会話してるだけなのに、

舞い上がってしまう。


そういえば今日は

加賀見がコートにいなかった。


「あー。

今日はクラスの担任に呼ばれてて遅れた。

青井も呼ばれてたろ。忘れてた?」


ちょっと顔をしかめた加賀見。



加賀美の目線の鋭い整った顔に

黒い短髪がよく似合う。

しかめた顔もなんだかキレイに見える。


担任に呼ばれてた??


・・・そうだ、今日は先生の

雑用お手伝いの日だった!


加賀美はクラスの学級委員、

私は副学級委員だ。


「ご、ごめん!すっかり忘れてた。。」



いつもだったら加賀美と一緒の用事を

忘れるはずがないんだけど、

最近は嫌なことが頭を占めていて

思い出しもしなかった。


「まぁ今日は大したことなかったから

良いよ。」


加賀見が笑う。



一見とっつきにくそうだけど、

実はすごく優しいということを

一緒に学級委員になって初めて知った。


学級委員自体はとても嫌だったけど、

加賀美がいるから楽しいんだ。


「本当にごめん!次はちゃんと行くね。

じゃあ急ぐから!」


ちょっと名残惜しいが、

先輩に怒られたら面倒だ。