もしもし?私電話男です。

「詳しいことは言えないけど親とまたケンカしちゃってね。やっぱり私は自分の力でやってくのが性にあってる気がするし。留学するというのはとっさの嘘。別に深い理由なんかないの。ただ親のせいにしたくなかったから…」



一筋の涙と共に語られていく言葉はまぎれもなく真実そのものだった。



抱き締めてあげたかった。一人じゃないんだってこと。なのに今の俺にはできない。



また江奈ちゃんを傷つけてしまいそうで…これ以上どうしていいか分からなかった。



「私はここにいれそうにないから別のところでバイトしようかな…」



「そうか。」



俺は…これからどうすればいいんだろうか。



「じゃあまたどこかで。」



結局尾張さんは一度も振り向かず行ってしまった。



俺は?



取り残された俺はただ立ち尽くしていた。



雨が降ってもどうすることもできずに。
無力を痛感した瞬間だった。



気がついたら俺は靴屋の休憩室に横になっていた。



「おい!大丈夫か。」



微かに聞こえてくるのは俺の安否を心配しているものだった。



「良かった…」



「…店長…どうして…俺何でここに…」



「雨なのにずっと傘をささないでいたそうじゃないか。その場に倒れていたんだよ。」



「そう…でしたか。」



ようやく俺のここに至る経緯を思い出した。