大島先輩…何とか言ってよ。信じてよかったって、そう思わせてよ。



その願いが届いたのか、あるいは周りの声に気づいたのかどうかは定かではないが



「ちょっと…こっちへ来い。」



そう言うと俺の手を引っ張って、別室へと連れていかれた。



「聞こえただろ…お前も。俺が借金してること。」



「本当なんですか?」



「そうだ。すまなかった。」


「理由は何だったんですか?何か理由があったんですよね?」



「俺は少し前に離婚してな。子供もいたから養育費とかを払わないといけなくなって。離婚してから酒ばっかり飲むようになって気づいたら金はなくなってた。それでお前ならって…でもお前も金ないのは分かってたから…こうするしかなかったんだ。」



先輩…俺を騙したんですか?



お金なくなったのは先輩のせいじゃないですか。



でも先輩の今の気持ちを考えたら、そんなこと言えなかった。



「詐欺だよな…犯罪なんだよな…」



先輩は涙していた。



情けなくてしかたがないのだろうか。



俺だって、電話男が止めてくれなきゃ同じようなことをしていたんだ。



今先輩にしてあげれること。それは…



「その小切手全額あげます。だから…もうやめてください。俺、先輩にたくさん助けられました。だから今度は俺が助ける番です。」