あの人というのは、大島先輩のことだ。



花瓶なんて壊した覚えないんだけどな…



俺が忘れてただけかもしれないし。



車を降りて、受付で大島先輩を呼んでもらった。



「あっ!大島先輩。お待たせしました。」



そう言って小切手を渡した。



なのに何故か大島先輩はうかない顔をしていた。



「あいつもしかして、後輩から金絞ってんのー。」



「借金あるからって、そりゃあないわ。」



……借金?



うかない顔をしていたのはこういうことだったのか。


でもなんで、こんな周りの社員達は陰でそんなことを言うんだろう。



大島先輩は誰からも信頼されてたはずなのに。そんな性格だったおかげで助かったのに。



大島先輩がそんなことするわけない。



するわけ…



ないんだよな。



………そうか。



尾張さんに俺は散々信じるなとか言ったけど、尾張さんは信じ続けた。



結局俺は口だけなのかな。他人には言えるくせして、自分だって大切な人を信じてるじゃないか。



同じように裏切られるだけなのに。



しかも大切な人ほど裏切られた傷は大きくなる。そんなこと分かってたはずだったのに。



お金と罪の重さを知ったばかりによけいに…