「丹羽さん」

空白の世界に男の人の柔らかい声が響いた。

その声を聞くのは久しぶりだったから、一瞬気のせいかと思ってしまった。

「丹羽さん!」

声の主が再び咲子に声をかけてくる。

我に返った咲子は、慌てて後ろを振り向く。

そこには坂井医師がいた。

彼は普段着姿で微笑んでいる。

びっくりした。

「坂井先生!」

咲子はかなり高い声を上げてしまった。