彼みたいな人と付き合っていれば幸せになれるだろうと思う。

それでもやっぱり心がノー!と言っている。

心ってとっても無体だと咲子は思った。

心はすぐ目の前にある幸せを「つかみ取るんじゃない!」なんて言ってくる。

これを逃したら今度はいつ幸せのチャンスが来るかわからないっていうのに、心ってやつはそんな無体なことを平気で言ってくる。

人の気も知らずに勝手なもんだ。

でも、咲子は自分の心に従おうと思った。

直感って結構当たるものだ。


幸いにしてそれ以降、外勤の徳森とは社屋ですれ違うことはなかった。

きっと彼は今でも咲子とのことを苦々しく思っていて、もしかしたら自分をふった彼女のことを恨んでいるかもしれないけど、咲子はこれで良かったのだと思っている。

自分の心の声に従うってことは自分を大切にすることだ。


ずっと後になってこれを振り返った時、自分の決断は正しかったと思うだろう。