咲子はちょっときいてみたくなった。

「高村さんと先生は長いお付き合いみたいですね。先生はどんな方なんですか。やっぱり優しいんですか」

「坂井先生はいい先生です」

高村さんは即答した。

「先生は僕の話をよく聞いてくれます。僕の新作、『戦国新幹線』の話も聞いてくれます」

「センゴクシンカンセン!?」

「はい。僕、小説を書こうと思っているんです!」

高村さんの目が輝き、突然饒舌になった。

話を聞くと彼は鉄道マニアで、現代の新幹線が戦国時代にタイムトリップするという一大SFの構想を練っているらしい。

彼のような障害を持つ人は、特定の分野に人並み以上の関心を持っているようだ。彼は新幹線の種類だけでなく、首都圏や近畿圏の私鉄、廃線になった寝台特急にも詳しい。携帯の着信音は京急の特徴的な発車音だった。まだ心臓病を発症していなかった頃は、青春18切符で全国を旅していたらしい。