病室の外に出掛けると誰かしらに遭遇する。

その日は食堂に出掛けた。

券売機のメニューを見ると、総じて社食より値段が高い。こういう施設の食堂だから、きっと塩分とカロリーは低めなのだろうけど。

きつねうどんを食べていたら、高村さんに声を掛けられた。

「えれなちゃん、こんにちは」

「こんにちは、高村さん」

「この前はサインどうもありがとうございました」

ちょこんと頭を下げる高村さんの目は宙を漂っている。

「どういたしまして。坂井先生から聞きましたよ。私のサイン喜んでくれたそうですね」

咲子は笑顔で彼の顔を見上げる。

「坂井先生?」

「はい。先日、コーヒーショップで先生に会ったんです。高村さんが私の病室に来たことを話していました」

「そうですか」

高村さんはきょとんとした表情を浮かべる。それからしばらく直立不動だったので、咲子は彼に席をすすめた。