包みを開くと、そこには平たいカードキーが入っていた。穴の部分に赤いシルクのリボンが蝶々結びで結んである。
「これ鍵だよね」
「うん、そう」
真向かいに座る先生の目は輝いている。
「何の?」
こんな形状の鍵を使うのは一体どんな製品なのか。現物がないというのは奇妙だ。
「それは部屋の鍵だよ」
「部屋?」
咲子の頭の中が一瞬真っ白になる。現実の分析に思考が追いつかない。
「そう、部屋。僕たちがこれから暮らす部屋の鍵だよね」
「私たちが暮らす部屋!?」
咲子の声が裏返る。
「そうだ。僕たちは年明けに新居へ引っ越すんだ。僕の同僚の一人が、アメリカのジョンズホプキンス大学付属病院で、在外研究をすることになったんだ。彼の家族が留守にしている間、彼の部屋を貸してもらえることになったんだよ。とっても良心的な賃料でね。山の手にあるタワーマンションの3LDK。君の職場の沿線だ。主寝室にはウォークインクロゼットが付いていて、浴室には乾燥機も付いているよ。彼の任期は4年だから、それから後のことはゆっくり考えればいい」


