咲子は急いでアパートに帰り、先生が来る前に大急ぎで部屋の片付けをした。化粧直しもチャチャっとしておかねばならない。
気分が高揚する。
ほどなく先生がアパートに現れた。
「お邪魔するよ」
「どうぞ」
彼は、咲子が同居する時のために買ったスリッパをはいてダイニングに入る。彼はもう何度もこの部屋に来ている。スリッパは一度はお蔵入りになるかと思ったが、こういう用途で役立っている。
「はい、どうぞ」
彼が持ち込んできた食べ物をテーブルの上に並べる。
デパ地下で買ってきたローストターキーとシーザーサラダ、ホウレンソウのキッシュ、シャンパン。しかもシャンパンはモエエシャンドンだ。それから、咲子が勤めるC社のクリスマスケーキもある。
「うわぁ、豪華! クリスマスにこんなごちそう食べたことないわ!」
咲子が感嘆の声を上げると、先生はうれしそうな笑みを浮かべる。
「さあさあ、お腹が空いているだろう。まずは食事にしよう」
「あの、ちょっと問題が……」
「何?」
「うちの会社のケーキ、実は社販で一個買っちゃったの」
咲子が小さな箱を人差し指に引っ掛けて持ち上げる。
「今夜は無礼講だよ。僕のも君のも両方食べたらいい」


