店の外に出てから、折り返し彼の携帯に電話をかける。
思いの外、数コールで応答した。
「もしもし咲子さん」
「先生、どうしたの?」
今晩はシフトが入っていないのだろうか。家族サービスもしなくていいのだろうか。
「今、どこ?」
彼がたずねる。
「帰宅途中よ。電車を降りて、もうすぐ家に着くところ」
「それはちょうど良かった。今、そっち行くよ」
「そっちってうち?」
「そうだよ。忙しいかな?」
「ううん。でも今日、先生のお仕事は? それに家族サービスもしなくていいの? クリスマスだし」
「今日、夜勤は入れてないよ。君のために空けた。それの元女房と娘は新宿でクリスマスミュージカルを観に行ってる」
「そうなの」
「仕事が立て込んでいたからね。今日休めるかどうか土壇場までわからなかったけど、なんとか時間を作れたよ。食べる物を持って行くから、買い物は何もするなよ」
「あ、でも……」
ケーキを1ピース買ったと言いかけたところで、先生は電話を切ってしまった。
商店街の真ん中で咲子は首を振る。
まあ、いいか。ケーキを二人で半分こすればいい。ロウソクを立てた方をこちらに譲ってもらおう。これは咲子の戦利品だ。


