先生のマンションの前で待ちぶせして問い詰めた。彼はなかなかことをはっきり説明してくれなかったから。

あんなに同棲に乗り気だったのに、どうして態度を変えるのか。咲子はもう直接会って聞くしかなかった。

一緒に住むのか住まないのか、この際はっきりしてほしい! わけがわからないまま放っておかれるのは嫌だ。

仕事帰りの彼をつかまえた。彼はその表情に疲労をにじませながらも、咲子の問いにしぶしぶ答えてくれた。

先生の娘が彼を恋しがっているとの話だった。以前、一の宮で会った、あの小学生の娘だ。

彼女は両親の復縁を希望しているのかときいたら、先生は黙って首肯した。

ありえないことではない。まだ年端もいかない子供なら、別れて暮らす父親が恋しいものだ。

でも、彼はすぐに復縁の可能性を否定した。

それってずるいと咲子は思った。だって、それって道理としてはよくわかるから。そして先生は、あっちを立てたらこっちが立たないという厳しい状況に置かれているのだ。

自分の方を選べとは言えなかった。それは彼の決めることだと言った。

先生といつも一緒にいられたら幸せだけど、それを強要することはできない。彼を束縛したくはない。

同棲の計画は一旦白紙に戻った。

なんだか急に気持ちが萎えた。バツイチと付き合うとこういうことが起こるのか。