いまだにきゃんきゃんと声を荒げている石原を放置する事にしたのか、宗形は事件の内容を、1から10どころか、1から100まで話し出した。
「………とりあえず」
宗形の話が一段落ついたところで、陽希が居間の外に目を向ける。すると、駿尾がするりと入ってきた。
石原と宗形の視線を受けた駿尾は、襖の前でお座りの体勢をする。
「宗形さんのお話、結構気になるところがあったので、こっちでも調べさせてもらう、という事でいいですか?」
「あぁ、それでいい」
そこまで話がつくと、駿尾が一度2人に近づき、そのまま居間の外に歩いていく。それにつられるようにして、宗形、石原と続く。最後は陽希だ。
宗形が「よろしくな」と告げて帰って行くのを玄関で見送ると、陽希は宗形が置いていった写真を眺めた。
そこに写っていたのは、今回の被害者である女子高生の、生前の姿だ。その制服は、このあたりでも有数の進学校の物。
『………陽希よ』
既に本来の三つ尾姿に戻っていた駿尾が、陽希を足元から見上げる。
陽希は写真を眺めながら、何かを考える顔をした。
「………駿尾」
『何ぞ』
「今、家の敷地内に付喪のじいさんはいる?」
『うぅむ……。今朝方、庭先で見かけたような気もするな。探してこよう』
「助かる」
駿尾が柱の向こうに消えて行くのを見送り、陽希は自室である離れに足を進めた。
