図書室。
今時の高校生は、いも臭く古びたこんな所へは来ない。

だからこそ、私は此所に来るのだ。

「るめいくん、人は何故、生きているのだと思う?」

それが彼との出会いだった。
私と同じ、静寂を求めて此所に来ている唯一のひと。

「私、そう言った非科学的な事は嫌いだわ、とおげんくん」

十幻くんは眉を寄せる。

「僕の方も、るめいくんのそう言った堅苦しい思考は、どうも哲学的に相反する」

ふん、と鼻を鳴らしてソクラテスの著した本を開く十幻くん。

私は栗色の髪を書き上げて、三平方の定理について書かれた本を開いたわ。

十幻くんと出会って、2年。

高校3年生の今でも、この十幻くんとは仲良くなれない。

哲学は嫌いなの。
国語も嫌い。

人の感情をxに置き換えることはできないもの。

計算で答えを導けないものはいや。

答えがたくさんあるのもいや。


テストはいつも同じ、1位。
十幻くんと1点だって変わらないわ。

先生からの評価も同じ。
いつだって、「2人は全く一緒だね」なんだから。

私が、この哲学男と一緒な訳が無いわ。


「ねぇ、十幻くん」

「なんだい、るめいくん」


だから私は。

彼を雄と見る事にしたの。


私に返事をしておいて、ちらりともこちらを見ようとしない十幻くんの太股に跨がる。

やっと、その視線は私に向けられた。


「どうしたんだい?雌は子孫を残す為に本能的に雄を求める。君の衝動も本能のままなんだよ」

それは勿論、雄もでしょ?

私以上に熱い目をしておいて、彼は焦らすのがだいすきなんだ。