狼との恋

新見の切腹から3日後
文久3年9月16日 (1863年10月28日)
先の八月十八日の政変(薩摩藩が会津に働きかけて京から長州藩と尊攘(そんじょう)派公卿(権力を持った朝廷の幹部)を追い出した政変)の活躍により会津藩から『新選組』という新しい名を拝命した。
勇「会津藩より新しい名を頂戴した!
新選組だ!」
近藤は皆に聞こえるように大きな声で言った。
恋「新しく選ばれた組…いい名ですね」
みんな「ああ!」
恋たちを含め隊士たちも皆嬉しそうだった。近藤は隊士たちを解散させ幹部だけを残すと
勇「よし!新しい名も決まったことだし飲みにでも行くか!いいでしょう?芹沢さん」
と言った。芹沢は疑わしげな目で
鴨「ああ。しかし近藤君と土方君は下戸(げこ)(酒を飲めないこと)ではなかったか?」
と聞いた。近藤は
勇「少しは飲みますよ。トシいいよな?」
と土方にたずねた。土方は
歳三「ああ。恋 お前も来い」
と言った。女である自分が呼ばれたことに恋は驚いたが
恋「え?あっはい!」
と言い慌てて幹部たちの後を追った。
島原 陽炎
島原の陽炎という店の座敷に通され座ったとき
勇「恋 耳かせ」
兄の近藤が隣に座り話しかけてきた。恋は不思議に思いながらも耳を近藤に近づけた。近藤は小さな声で
勇「いいか?よく聞け この酒宴が終わったら屯所で芹沢さんを暗殺する」
恋「!?」
近藤の言葉を聞いた恋は声をあげそうになったのをこらえ近藤の話を聞き逃すまいと話の続きを待った。
勇「実行犯はトシと総司だ。オレはここで過ごす。お前はどうする?ここに残るか芹沢さんの暗殺の手伝いをするか」
近藤の問いかけに恋は少し考え
恋「私は芹沢さんの暗殺のお手伝いします」
と答えた。近藤は少し驚いた顔をしたが
勇「分かった」
と答えた。そのとき
歳三「安心しろ。何かあったらオレが
守ってやるよ」
いつの間にか恋の隣に座っていた土方が
言った。それに続き沖田も
総司「僕もいるから」
と笑顔で言った。2人の言葉に安心した
恋は
恋「はい!」
と2人だけに聞こえるように言った。