「ねぇ、玲央くん。もしかして、今日はずっとそれ作るの?」
ケーキの残りを食べ終えて。
ちゃっかり玲央くんの分までいただいちゃって。
すっかり冷めた紅茶をすすりつつ、シュシュ作りに没頭する玲央くんを見る。
「んー…。いくつか作りたいなって。明日、みんなにも見せたいし…」
手を動かしたまま、顔も上げずに答える玲央くん。
“みんな”って言うのは、部活の仲間のことだ。
部員数10名足らず。
しかも男子は自分だけ、な“手芸部”で、玲央くんは部長を務めている。
「えーっ?後じゃダメ?一緒にゲームしようよ。」
玲央くんと遊ぶべく、大きなゲーム機を抱えてきたんだよ?
基本的にゲーム嫌いな玲央くん。
一緒に楽しめるものを探すだけでも大変なのに…
「ごめんね、マコちゃん。バザー近いから…。早めに見本作らないと…」
バザー、か…
手芸部では、年に数回、作品を地域のバザーに出品している。
その売り上げを、毎年いろんな団体に募金してるらしく、大事なイベントらしいんだけど…
「なるべく早く終わらせるから、ちょっと待ってて?そのへんにあるやつ、好きに見てていいから。」

