「あっれ~?今回はまた随分と毛色の違った子だね」
「何?可愛い系に飽きて、今度は美人系選んだの?」
名残り惜しい気持ちで扉を見つめていると、背後から視線が突き刺さってくる。
興味津津といった気配を隠す事なく向けられた言葉は、明らかに私に対する感想を含んだものだ。
狭い室内。
自分が会話の中心になっているというのに、いつまでも背を向けているわけにもいかず、渋々振り返って、思わず目を見開いた。
ふんわりとした襞が幾重にも重なったスカート。コルセットのようなデザインで強調されたウエストのくびれとふっくらとした胸元。所々に上質なレースをあしらったお姫様のような黒のワンピースを着た、かなり濃い目の化粧をした女性。
黒のパンツに変わったデザインのネクタイとシャツ。所々に鎖のようなアクセサリーをあしらった何処か王子様のような雰囲気の恰好をしている男性。
2人の胸元には、お揃いのシャーベットオレンジのバラのコサージュがついている。
あまり、この手のファッションには詳しくないが、所謂、ゴスロリと称される部類のファッションと認識して、間違いないだろう。
そんな2人が互いに寄り掛かりながら、まるで玩具を見つけた子供のような目でこちらを見ている。
あまりにも似合い過ぎていて、本当に何処かの姫と王子ですか?と言いたくなるような2人だが、どうしても場違いな印象が拭えない。
でも、問題は、2人の格好じゃない。
2人の顔だ。
別に、顔が変だっていう事ではない。むしろ、綺麗過ぎる位に整っている。
そう、綺麗過ぎているのだ。
そして、私は、この顔見た事がある。
……雑誌やテレビの中で何度も、何度も。
「双子モデルのロウとシュリ……」
雑誌やテレビで見た時とは格好も雰囲気も全く違うけれど、2人セットなら間違いない。
海外でも活躍中の人気モデルの2人だ。
