ダンスホールを抜け、両側を壁で挟まれた階段を上り始めると、途端に周囲の賑やかさが緩和される。
音自体がなくなった訳ではないけれど、まるでベールにで包まれたかのように、音量が一気に減少した。
この壁、防音素材で出来てるのかな?
どうでもいい事を考えつつ、音と視界に入る人が減った事にホッとする。
見た目のせいか、華やかな席でも常に落ち着いていそう、多少の事では動じなそうと言われることに多い私だけど、本当は結構な小心者。
華やかな場所や賑やかな場所に放り出されれば、尻込みするし、人目にさらされたり、目立つ立場に置かれれば、焦ったり、戸惑って、逃げ出したくなる。
総合的に考えれば、階段を通過している間だけちょっと静かってだけの話で、現状は何ら改善されてないんだろうけど、それでも、つかの間の休息的な安堵を感じてしまう。
「ここのメニューは結構幅広くてね。フルコース的なものから、軽く摘まめるものまで揃っている。味もかなり良い方だと思うよ」
相変わらずの近距離を保ちつつ、春斗さんがにっこりと微笑みかけてくる。
美味しいご飯。
確かに魅力的な響きだけど……
状況が状況なだけに、堪能できる気がしないんですが?
