KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―



ひとまず、彼は無理矢理どうこうしようとか、私の困る事をしようとか、そういう事を意図的に考えて行おうとしている訳ではないようだから、私も、引きずられるのをやめて、自分の足で歩き始める事にした。


……まぁ、いつの間にか、フロアの奥の方まで引っ張って来られてたから、諦めがついたってのもあるけど。



溜息を吐きつつ、周囲を見渡す。

店内は、落された証明の中に綺麗な光が溢れかえっている、不思議な感じの空間だった。

中央には大きなステージがあって、いろんな人が躍っている。

分類的にはどう見てもクラブなんだけど、普通のクラブよりも何処か品があるというか、賑やかさの中に落ち着きと洒落た雰囲気が入り混じっている感じ。

お客さんも年齢層は幅が広そうだけど、学生特有の弾けた感じを持っている人も、しつこく絡んで来そうな性質の悪そうな人も、パッと見た感じでは見当たらない。



イメージ的には「大人のクラブ」といった感じだろうか?

或いは、品の良さという観点からみると「上流階級のクラブ」というのでもイメージとしては間違ってないかも。




「うわっ、凄い……」

不意に、上空を行き交うライトを目で追うように、視界を上へと向けて、思わずあんぐりと口を開けてしまった。

天井がやけに高いと思ったら、ダンスフロアの上の部分が2階分を吹き抜け状態にしてあり、そこに大きなシャンデリアといくつもの音響機器やライトが取り付けられていた。

光の洪水みたいなその空間は凄く綺麗で、圧倒される。



しかも、良く見ると、ダンスフロアから見える上層階は、ダンスフロアが見えるように一面ガラス張りになっていて、その向こう側は、こちらの喧騒と切り離されているかのような、落ち着いた雰囲気のバーのような作りになっている。

遠目に見えるお客さんも、ゆったりとした雰囲気で、ソファやカウンターに座って、お酒や食事を楽しんでいる。