ガガガ……。
機械仕掛けのドアは、私の気持ちに合わせて、その開閉を待ってくれる事はない。
もはや、どうする事も出来ずに見開いた私の目に、徐々に見た事のない景色が広がってくる。
「さぁ、どうぞ、シンデレラ」
春斗さんがドアが閉まらないように、肩手で押さえながら、エスコートするように私にもう一方の手を差し伸べてくる。
……これはあれですよね。
ここに、私の手を乗せろ的な奴ですよね!?
こっちが恥ずかしくなりそうなキザな仕草なのに、何だか無性に似合ってる事に戸惑う。
……いっそ、全く似合わなくて、道化か何かみたいな感じだったら、遠慮なく笑い飛ばして無視できるのに。
彼のその仕草を見てると、妙に慣れていて、それが当たり前の行為のように思えてくるから性質が悪い。
こうなると、拒否すること自体が失礼な気がしてくる。
「……………………はい」
たっぷり間を空けて、不満を伝えた後、渋々ながら、ほんの指先だけをそこに乗せる。
「おや?お姫様は堂々としてないといけない」
そういうと、彼は自ら私の方へと手を伸ばし、指先だけだった重なる部分を、掌全体にまで広げ、ギュッと強く私の手を握り締めた。
……これ、紳士のエスコートとしてはどうなの?って行為だよね。
強引な彼の手に、ギョッとしていると、そのまま体ごと引っ張られ、ドアの外へと強引に連れ出されてしまう。
「……シンデレラは元々はお姫様じゃないので、堂々としてなくても良いと思います」
強引にエレベーターから下ろされた私は、唖然としつつも、私に続いて降りてきた春斗さんに、ボソリッと小さな声で文句を言った。
シンデレラは元いじめられっこです。
堂々としている必要性0です。
そして、私は、舞踏会に出たいとも思わない『シンデレラ』なので、魔法使いは不要だし、ガラスの靴もいりません。
家は屋根裏で十分だし、お友達はネズミ達で十分なんで……お家に返して下さい。
ここまで来たらもう帰らせてもらえない事は十分承知してるし、言っても無駄なのもわかってるから、私は心の中でだけ、もう一度願った。
