ドキドキと鼓動が早まり、自分が緊張してるのを感じた。

「やっぱり……」と引き換えそうと後ろを振り返ると、春斗が私に続いてエレベーター乗って来た所だった。

彼はそのまま扉の前に立つ。

わざとではないんだろうけど、その立ち位置が私の退路を見事に塞いでいる。



「……あっ!」

春人さん越しに、無情にもエレベーターの扉がゆっくりと閉まって行くのが見えた。

急に狭いエレベーターの中の空気に重みが増したような気がする。




……もう逃げられない。

というか、春斗さんの強引さを知った時点で、既に逃げられない気はしてたし、何度も彼に振り回される事に関しては諦めようとは思ってたんだけど……これでもう完全にアウトだ。


ウィィィというエレベーターが上昇していく機械音を聞きながら、私は手の中のカードを見た。

改めてカードを見ると、裏面に小さな文字で『クラブKINGDOM』と書かれている。

店名の隣には、きちんと住所と電話番号まで書いてあった。


これだけ、セキュリティもしっかりしてて、カードにも怪しい内容は書かれていないし、意外と大丈夫かも?

その程度の事は気休めにしかならない事は自分が1番よくわかってるけど、少しでも安心したくて自分に言い聞かせる。



ポーンッ。

気持ちを落ち着けるべく、深呼吸をした瞬間、到着を告げる軽やかな音が鳴り響き、私はビクッと体を震わせた。