「店員さんが、直してくれたんです」
彼が来るまでの間に、何処からともなく持ってきたメイクアップとヘアセットの道具一式で、あっという間に私の顔を髪を整えてくれた店員さん。
その事を手短に話すと、すぐ傍にある彼の瞳から逃げるように顔を背けた。
「うん、いい感じだ。さすがだね。……ただ、肝心の服がまだだけど」
そんな私の様子など、全く気にも留めていないように、ニッと悪戯っ子っぽい笑みを浮かべると、彼は自分の背後で大量の服を持ったまま立っていた店員さんにチラッと視線を向ける。
視線を向けられた店員さんは、小さく頷き、了解の意を彼に伝えると、私の向かいのソファーの背もたれに、持ってきた服の何点かを見えるように並べた。
「一応、roseの服の中からも数点選んできたけど……lilyの方がいいだろ?」
ソファーに並べられた服は全部で5つのコーディネイトがなされていた。
その内の4つがlily crown。残りの1つがrose crownの物だった。
甘く可愛らしいコーディネイトと大人っぽくセクシーな印象のコーディネイト。
同系列のブランドで、一応、ロゴとか根底にある雰囲気とか同じだったり似ている部分もあるんだけど……系統が全く違う2つ。
例えるなら、色気と大人っぽさがあるrose crownは女王で、可愛らしさがメインのlily crownはお姫様という感じ。
パッと見てわかる位には、そのコンセプトは明確に分かれている。
そして、やっぱりそんな2つのブランドの内、より私に似合う服といえば……rose crownになっちゃうんだよね。
