「畏まりました。では、こちらで何点か見繕わせて頂きましょうか?」
店員さんがニッコリと上品な笑みを浮かべる。
きっと、私の格好を見て、ゆっくりと店内を見れるよう案内するよりも、早急に着替えられるように、選択肢を絞って提示した方が良いと判断してくれたんだろう。
そんな彼女の気遣いが嬉しい反面、きっとそうなると、私の見た目から判断して服を選ぶ事になるから、私の好みとは全く違う物がチョイスされる可能性が高いんだろうなと思うと、すぐに頷く事が出来なかった。
「あの……」
どう答えればいいのか判断に悩み言い淀む。
そんな私を、彼女は笑顔を崩さず見返し、僅かに首を傾げた。
……どうしよう。
チラッと春斗さんを見て、もう一度店員さんを見る。
……もう好みとかどうでもいいや。
結局、私は「早く返事をしないといけない」という焦りに負けて、妥協する事に決めた。
「それじゃあ、お願いしま……」
「待って。服は俺が選ぶから」
意を決して、返事をしようとした私の言葉を、またしても春斗さんが遮る。
この人は、本当に私の意思を無視する事が得意なようだ。
自分で妥協すると決めたし、正直、春斗さんの趣味が悪くさえなければ、彼が選んでも店員さんが選んでも、私にとっては大差がないんだけど……何だか腹が立つ。
