「あぁ、言われて見れば確かにそうだね」
彼は私の言葉に納得したのか、ウンウンと頷いている。
よし、これで彼を王子ポジションから引きずり降ろせば……
「じゃあ、俺は魔法使い兼、王子って事だね」
王子じゃなければエスコートされる理由もなくなると思って、彼に握られていた手を引き戻そうとしたら、ギュッと今まで以上に力を込められて、引っ張り返された。
「そこ、兼任なんですか?」
キュッと眉根を寄せて彼を見ると、彼はニヤリッと笑った、引っ張り戻し返された私に手に口付けた。
咄嗟の事で抵抗する間もなく手に触れた唇に、私は体をビクリッと震わせ固まった。
「配役2人しかいないんだから、兼任ってのがあっても問題ないだろう?」
「……」
いや、むしろ、2人しかいなかったら、劇自体を諦めようよ。
そうすれば、私も貴方もお互いにこんな茶番から解放されるんだから!
慣れないキザな態度を取られ、8割位思考停止してる私を、春斗さんはクツクツと笑いながら、引っ張っていく。
その顔に浮かぶ笑みが、私にはどうして悪戯好きな悪魔の顔に見えて仕方がなかった。
