「……春斗さん、今、私達は何処に向ってるんですか?」
心の中で舌打ちをして、わざと『春斗』の所を強調して言うと、彼の視線がまた一瞬だけ私を捉える。
そこには、不満の色にとって代わり、状況を楽しんでいるような雰囲気が浮かんでいた。
なんだろう、このイラッと来る感じは。
「もちろん、服を買いに行くんだよ」
正面を向いたまま、頬を緩めた彼は、当然のようにそう答える。
そういえば、さっき、確かにお店で「まずは着替え」って言ってたっけ。
その事を思い出して、自分の服を改めて見る。
着てきたのがセーターワンピだった事もあって、しっかりと水を含んでくれたそれは、まだじっとりと湿っている。
ただ、春斗さんが私が風邪を引かないようと、車の中の暖房を最強にしてくれている事もあった、今は震える程は寒くないけど。
「服買いにって何処に行くつもりですか?」
場所はデパートが立ち並ぶ街中。
小売店もいくつも立ち並んでいるけれど、どの店を目指しているかはわからない。
大体、私の服を買いに行くのに、私に何所がいいか訊かないのもなんか変な感じがする。
