「すいません、大丈夫ですか?」
少し低くて、優しい声が聞こえた。
胸が、ドキドキする。
『だ…大丈夫です…』
「そっか、良かった」
その人は、にこりと笑った。
私は、遊佐の事を思い出し、ジュースを買わなければ、と焦る。
自動販売機で林檎ジュースを選ぶ、
「あっ…林檎ジュース…」
後ろから、少し悲しそうな声が聞こえる。
ふと、前を見ると、林檎ジュースのみ、売り切れになっていた。
『…えっと…あの…
飲みます?』
買ったばかりの冷たいジュースを、差し出す。
「え、良いの?」
申し訳なさそうな顔をするその人に、私は笑顔で頷く。
「ありがと、これ、彼女が大好きなんだ」
また、にこりと笑った。
『そうなんですか』
声が震えている気がした。
「あ、じゃ、僕、待ってる人居るから、
またね」
そう言って、手を振って去って行った。

