「由香?」
さっきから押し黙ってる由香。津上の事務所兼ねぐら。
「さえこ・・・この前はごめん・・・あの時家だったから。」
「どうして家だから?なんで言えないの?誰がやったの?」
由香は激しく首を振った。
「言えない。言えないよ。」
「だから、どうして?」
「怖いの。・・・あたしが知ってる事が」
「何を知ってるの?あたしも津上ちゃんもいるよ。大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃないよ。あたし・・・」
「家族の誰かか?けど、由香さんのお父さんは外にいたんでしょ?」
由香は耳を塞いだ。そして半狂乱になって叫んだ。
「違う違う!そうじゃないの!」
「・・・妹?」
「・・・」
「まだ中学生だろ?」
それから由香はしゃくりあげたまま。ずっと・・・

いきなり携帯が鳴った。
由香はポケットから取り出して、画面を見た。途端取り落とした。それから拾おうとせず震えている。
津上は落ちてる携帯を拾った。『着信 加奈さん』
「加奈って妹?」
由香は首を縦に振った。
数秒後、携帯は鳴り止んだ。
津上は、その異様さに身震いした。普通自分の妹に『さん』を付けるか?
黙り込む3人。その沈黙を破ったのはさえこだった。
「由香?妹だよ?何を怖がってるの?」
「・・・あんたたちは妹を知らないからだよ。」
さえこは存在は知っていたが、一度も見かけた事は無かった。
「・・・会った事ないね。由香とはもう10年以上の付き合いなのに・・・。つか由香んちへは殆どいかなかったしね。・・・もしかして妹に合わせたくなかったの?」
由香は首を縦に振った。
「どうして?」
由香は意を決したみたいだった。それから長い話を始めた。