クラブに到着
中では大音量のBGM
アップテンポの曲に合わせて
男女がダンスしている


「あ!知り合い発見!ちょっと行ってくる!」

「ちょっと良輔!」


ほんとにあいつは!
迷子にならなきゃいいけど



「ねぇ!詩歌!あたしかっこいい人探してくる♡」

「え?麗花まで?」


麗花まで何処かに行ってしまった
完全に1人だ
どうしよう

「とりあえずカウンター席いればいいよね……。」


今日ははじめて尽くしでなんだか疲れたよ
それにしてもみんな楽しそうに踊るなー
見てるだけで十分かな、わたしは

「おーい。」


声のするほうに顔を向けると
綺麗な顔をした男の人がいた
どこかで見たような、でも思い出せない



「つまんなそう、1人?」

つまんなそう。って……
少し当たってるし……


「友達と来たんですけど…、みんなどこか行っちゃって…」

「ふーん。あ、飲み物ないじゃん頼んであげる」



知ってる様な顔なんだけどな
思い出せない


「はい、美味しいよ?」



そう言って彼が出してくれたのは
水色の炭酸にオレンジが添えてある飲み物

「ありがとうございます……。」

「ここ始めてだよね?いいもの見せてあげる、おいで?」


始めて会った人にどうしてこんなに話せるのか自分でもわからない
だけど、今日のわたしはいつもとは違う


「はい……」



手を引かれ
お店の奥の方まで行く
途中、店員と何かを話していたけど爆音のせいで良く聞こえなかった

そして大きな扉を開け中に入った


「すげーだろ?」


そこには眩しく輝くネオン街の夜景だった

「わぁ!キレイ!」

「お、笑った。」


そのときの彼の優しい微笑みに
惹かれている自分を感じた



「君、笑ってる方が可愛いよ。」

「へ?」


男の人から可愛いなんて言われたことない…
どう反応したらいいか困る



「はは!そんな困らないで!あ、俺、晃待たせてるんだ。ごめんもう行かなきゃ」

「あ!わたしも友達探さなきゃ!」


笑顔が眩しかった



「……また来る?ここ。」

「絶対!絶対に来ます!」

「名前、」

「名前……、あ、流川詩歌です。」

「うん。わかった。俺は一ノ瀬俊。覚えといて、あとこれ。」



一ノ瀬俊
すぐに自分の脳内で読んでみる
キレイな響き……

それからすぐに彼は立ち去った
彼からもらったのはカードの様なモノ
表にはアドレス、電話番号
裏にはBAD 一ノ瀬俊
と書いてあった