「まさか咲?

 何も出来てないとか?」




図星。


大人しく頷いてみた。





「司は多分、今頃必死にやっててよ。

 私がLIVEで居ないって知るやいやな、
 あの子ったら、一花がいなかったら
 ゆっくり勉強がはかどりそうだなんて言うのよ」



一花先輩は思わず司の愚痴を零す。



「私も試験勉強しなきゃって思ってたんです。

 だけど依子先輩が、チケットをくださって。

 一花先輩、気が付きました?

 YUKIの写真集に出てくる桜。

 うちの神社の御神木なんです。
 
 それに気が付いた時から、何となくYUKIが気になって。

 それでYUKIに逢えるチャンスかなって。

 彼、私が知ってる人に良く似てるんです」




この場所に移り住んだ時から、強烈なスキンシップに悶えながらも
親身にしてくれる一花先輩に心を許してる私は、
YUKIのLIVEに来た経緯を話した。



和鬼の話には触れることができないまま。




「依子さまのチケット。
 それで昼休み一緒にいたのね。

 依子さまのお父様はYUKIの事務所の社長ですものね。

 だけど……私好きに馴れないわ、あの一族は……」


っと意味ありげに呟いた一花先輩。



何となく一花先輩も、
依子先輩の持つ裏の姿みたいなものを
感じているのかも知れないと思った。




車窓は地元の見慣れた景色を映し出していく。






「咲、良かったら私が勉強見てあげましょうか?」



一花先輩からの嬉しい申し出。


でも私は……約束の場所に行きたい……。




「一花先輩、ごめんなさい。
 YUKI、知ってる人だったんです。

 それで今日、神社の神木の前で約束してるんです」


「約束?こんなに夜遅くに?」