ボクの希望。


そう願ったはずなのにいざ、
咲がYUKIの目の前に現れると戸惑いを隠せない。





『YUKI、よろしくて?』


楽屋のドアをノックした音が聞えて、
ボクは甘く柔らかい声色で彼女に入室を促した。


姿を見せたのは、
声の主でもある依子さん。


ボクがお世話になっている
所属事務所の社長令嬢。


そして……後ろにいるのは、
気配だけで十分すぎるほどに伝わる存在。

着物にスカートを重ねた
斬新な姿の咲が後ろに控える。






……どうして君が……。



……咲……

何故、君は……ここにいるの……?




ボクは君の記憶を消したはずなのに。


君の眼差しはYUKIを見つめているの?
それとも……?



『YUKI、こちら私の後輩・咲。

 さぁ、咲、ご挨拶なさって』


いやっ、違う。

ボクが求め続ける……咲だ……。


今……依子さんも
……咲……って言った。



別人じゃない。



残したYUKIの記憶を手掛かりに
彼女はこんなにも早く、ボクを見つけ出した。



彼女の一部となった、
ボクの血が証明してくれている。



咲を見つめるだけで、
あの日の契りを鮮明に思い起こす。

咲が依子さんに勧められて
ボクの前へと歩む。


動揺しているボクは
動揺を必死に抑えようと言い聞かせる。