満開の桜。
プラチナの髪。
……朱金の瞳……。
何故私は……
この瞳に懐かしさを覚えるの?
夢山に到着したら、駅前にはチケットを
売ろうとしている様々な人たちが
プラカードや紙などを持って立ってる。
売ろうとしている人、買いたいと望む人。
人それぞれが手に紙を持って主張しあっている。
ふと駅前の書店に目をやる。
その書店も、YUKIの存在が
デデンっと主張してる。
視界に映るのは満開の桜。
あれ?
もしかして……うちの御神木【桜】?
思わず写真集に引き寄せられるように近づいて、
その足でレジへと持っていく。
待ち合わせの時間。
依子先輩を乗せた車が
駅前で停まり、窓がゆっくりと開くと
車内から私を手招きする。
運転手が降りてきてドアが開く。
私はその車に乗って、
関係者専用入口から会場内に入ることとなる。
会場に到着すると依子先輩は、
私を連れて手慣れた様子で歩いていく。
依子先輩が社長令嬢としる関係者は
次々と深くお辞儀をしていく。
「YUKI、宜しくて?」
辿り着いた場所は
-YUKI様 控室-と記された部屋。
「依子さん、どうぞ」
その扉が開くと中から雅やかな衣装に身を包んだ
プラチナの髪に朱金の瞳を持つあの人が……微笑んでいた。
「YUKI、こちら私の後輩・咲。
さぁ、咲、ご挨拶なさって」
依子先輩に促されて、
YUKIの前に歩み寄る。
「こんばんは。
咲さん、YUKIです。
今日は楽しんで行って」
その人がゆっくりとその手を出す。
透き通るように白い肌。
流れるような指先。
「譲原咲です。
すいません、私……
塚本神社の孫なんです。
YUKIさんは
そちらに行かれたことはありますか?」
思わず声にして紡いだ言葉。
「ないよ」
「そうですかっ。
YUKIさんの写真集の桜の木が
うちの御神木のような気がして。
気のせいですか……変なこと聞いてすいません」
そう言いながらも、
否定されたのに腑に落ちない私の心。
私が御神木がわからないはずなんてないのに……。
すると楽屋の扉がノック音の後、開く。
「依子さま、いらしてたんですかっ」
入ってきた人は先輩に気が付く。