「ただいま」
神木を抱きしめながら、
小さく呟く。
ふいに灯りが広がって、
司と一花先輩が姿を見せる。
その先には、
お祖父ちゃんとお母さん。
そして……
お祖父ちゃんの来客たち。
「……咲……。
帰ってきたか……」
ゆっくりと紡ぎだした
お祖父ちゃんの言葉に頷いき返した。
「ただいま。
お祖父ちゃん、お母さん」
久しぶりに触れた温もりは、
スーっと心を撫でていく。
「鬼の世界。
王を継いで、
どうしていくんだ?」
ふいに背後からそんな声が聞こえた。
少年が紡いだ言葉に、
司と一花先輩は
びっくりしたような表情を浮かべる。
「気張らずに……私らしく。
私は、咲鬼姫にもなれないし、
誰かになろうなんて思わない。
ただ叶うなら、この世界と鬼の世界を繋ぐ
架け橋になれたら」
和鬼を苦しめ続けた鬼と人の狭間。
そのすべてを
受けとめることが出来たら……
未来は開けるかもしれない。



