後悔なんてしない。


これが私にしてあげられる
唯一の愛の形だから。






約束だよ。


私はあの場所で、
貴方の帰りを待ち続けるから。





「姫様……」




ようやく辿り着いた珠鬼、
私が握る剣を見て、その場で膝を折った。



「失礼致しました。

 国主となられたのですね。
 陛下」


「珠鬼、和鬼は行ったわよ。

 これでいいわよね」

「……はい……。

 全ては陛下の仰せのままに」



頭を下げたまま、
その姿勢を崩すことのない珠鬼。



「ねぇ、珠鬼。

 私は確かに、
 この地の女王になり得た。
 
 和鬼が愛した世界だもの。
 私も和鬼の想いを受け継ぐわ。

 だけど私は、人の子。

 咲鬼姫の記憶はあっても人の子。

 だから向こうの世界の私も大切にしたいの。

 私、欲張りなのよ」



それに……約束したの。

何時か、向こうの世界の
あの場所で和鬼ともう一度巡り合うから。




「陛下は人の世と鬼の世を繋ぐ
 架け橋となりうるという事ですね」

「そう言って貰えると嬉しいわ。

 この世界の事、私は何も知らないの。
 王が未熟だと、世界も崩壊する。

 和鬼が親友と呼んだ貴方だから、
 私と共に、この鬼の世界を背負ってほしいの。

 だから珠鬼、貴方には今すぐ
 その頭を垂れることも、膝を折ることもやめて貰うわよ」



そう言い切った私に、
珠鬼は笑いかけた。



「何?

 何か、おかしい?」


「いえっ、和鬼が貴女に惹かれた理由が
 今ならわかるような気がして」



そう言った珠鬼も、
ゆっくりと空を仰いだ。