「お母さん?」



思わず問いかけた咲の言葉に
頷くように、金色の鳥は咲の頭上を旋回した。



旋回した金色の鳥の通り道から、
ゆっくりと地上へと流れ落ちるように広がる
白雲や霧のように見えるスクリーン。



やがてそのスクリーンは
懐かしい世界を映し出す。




映し出されるのは、
塚本神社の境内。




お社の中で眠り続けるのは、
あの日お祖父ちゃんのお客さんとして来ていた
少年少女たちを含む四人。



お社の向かい側、
神木の前に佇むのはお祖父ちゃんとお母さん。


思いつめたように疲れた顔をしている二人に、
思わずびっくりする。

お祖父ちゃんが心配するのはわかる。

だけど……お母さんにとっては、
私は必要のない存在じゃないの?



二人は桜の神木を見つめながら
祈るように何度も何度も手を合わせた。


二人の傍には、長い黒髪の着物の女性と、
同じ髪型の幼い少女。


黒髪の着物の女性の傍には、
依子先輩が眠り続ける。


依子先輩の顔を時折、覗き込みながら
神木を見つめるのは一花先輩。


一花先輩の隣には、
握り拳を震わせながら、
ただじっと神木を見つめ続ける司。



何?



失われていた大切なものがゆっくりと
広がっていくように優しさが湧き上がる。






『汝が求めし世界は優しい。

 だが優しさだけでは、
 人は育たぬ。

 己が道を歩き、
 壁を超えて突き進む故に
 人の魂は輝きを放つ』





スクリーンを見つめる私の隣に、
突然姿を見せたのは、
額に何かの文字が浮かんだ
白髪の青年の姿。